誤解から始まる恋もある?
「夕樹菜っ! ねぇ、あそこに座っている男の人、カッコよくない?」

里沙が興味津々な顔で、ひとつの席に視線を動かす。

その人は窓際の席で、ノートパソコンを真剣な顔で見ていた。私からは横顔しか見えないけど、確かに鼻梁は高くて唇も形がいい。さらっと流した前髪で眉は見えないものの、顎のラインはしっかりしていて意志が強そう。

薄いグレーのスーツをナチュラルに着こなしており、有能で仕事のデキる男性のようなイメージだ。

でも年齢は意外と若そう。まだ二十代のように見える。

「ね? イケメンだよね? 東京から来たのかな?」

里沙は『イケメンは大都会東京にいる』と信じて疑わない。カウンターに両肘をつき、今度はうっとりした表情で男性を見つめている。

「どうだろう……この辺の人じゃないことは確かだね」

それに、私のタイプじゃないことも確か。完璧な容姿は面白味がないというか、近寄りがたい雰囲気で苦手。

私の理想の男性はちゃんといる。
< 3 / 18 >

この作品をシェア

pagetop