誤解から始まる恋もある?
年配の女医さんは、なんでも話せるお母さんみたいな人。

なぜ痛めたのか、触診を受けながら先ほどの状況を話すと、お腹を抱えて笑われる。

「あー苦しい! そのイケメンの顔、見たかったわ」

ケタケタと笑っていた女医さんは両手を頬に当ててひと呼吸し、表情を真剣なものに戻す。

「それにしても、常識がない親ね」

ぶつかってきた子供たちの親に対して怒っているようで、口をへの字に曲げながら私の右手首をもう一度丁寧に触診する。

「軽い捻挫だけど、もっと腫れてくるようだったら病院へ行ってね。ここにはレントゲンがないから」
「はい。ありがとうございます」

右手首に巻かれた包帯に鼻を近づけると、ツーンと湿布の匂いがする。

たいしたことなくてよかった。でも、これだとレストランの仕事はできないな……。

レストランの責任者の元へ行こう、と医務室を出たとき、ポケットのスマホが振動した。とりだしてみると、表示されているのは金城副支配人の名前。

「はい、比嘉です」
『もしもし、夕樹菜ちゃん。怪我の具合はどう?』

開口一番、怪我の心配をしてくれる金城副支配人の優しさに心が温かくなる。

しかし、それと同時に迷惑をかけてしまった申し訳なさも込み上げて、すぐに返事ができない。

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