誤解から始まる恋もある？
「……君は大丈夫？　どこか打っただろう？」
「え……」

予想に反してかけられた優しい言葉に、思わず顔を上げた。首をほんの少し傾げた彼は、いたわるような眼差しで私を見ている。

「い、いいえ……」

軽く首を横に振ると、右手首を掴まれた。

「痛っ……」

鈍い痛みに顔が歪む。

「やっぱり。早く医者に診てもらったほうがいい」
「でも……」

優しく言われるとさらに申し訳ない気持ちが増してきて、言葉が出ない。そこへ金城副支配人が血相を変えてやってきた。

「須藤専務！」

専務？　金城副支配人の知り合いで、どこかの会社の専務の方なのだろうか。

「すみません！　私がつまずいてお客様に——」
「気にしなくていいから、早く診てもらいなさい」

金城副支配人に事情を説明しようとすると、イケメンが割って入ってくる。

「そう言ってくださっているのだから、君はすぐに医務室へ行きなさい」

金城副支配人の許可が下り、ホッとして肩の力が抜ける。安堵したせいか、右手首の痛みが増した気がする。

「本当に申し訳ございませんでした！」

寛大なイケメンに深く頭を下げると、その場を離れてホテル内の医務室に向かった。

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表紙・目次

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