私に恋をしてください!
しかしそれが大きな間違いであり、私がいかに未熟であることを本当の意味で理解するのに、私はそこからさらに3ヶ月かかった。

その間、私は販売五部で"買い殺し"状態。

営業局の成瀬川健吾(ナルセガワ ケンゴ)局長は羽賀部長から報告を受けても静観を貫いた。
私に対して何か人事的な処分や異動をさせるには時期尚早と判断したのかも知れない。

羽賀部長は皆が嫌がる仕事ばかり私に押し付けた。
急遽書籍の帯を差し替えることになった時には、倉庫に行って作業をしたり、著者のサイン会の応援メンバーを募るために休日出勤を嫌がる社員に声をかけたり・・・

それでも私はお父さんには現状について泣きつくことが出来なかった。

なぜならそれを言ったら"さっさと辞めてお父さんの決めた良家の男性と結婚しろ"と言われるのが関の山。
龍成社で働くのだって、始めは"結婚するのは嫌"とお父さんに話したことから卒業後の進路として押し込まれただけなんだ。

だから・・・私は耐えた。
そして、隣の販売六部にいる1年先輩の高松遥香(タカマツ ハルカ)さんのひと言が響いた。

『とりあえず"プライド"と"損得感情"は捨てなきゃね』

私はきっと、自分に甘すぎた。
プライド以前に、仕事への責任感が全くない。
自分がいかに楽をするかということしか考えていなかった。
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