狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅺ―ⅵ ヴァンパイアの王
門番の彼は預かった書簡を胸元にしまうと、王が行きそうないくつかの場所をあたることにした。
(ここにはいないか…)
時折、水の流れるオブジェの前で「暇だ」とぼやいている彼の姿を見かけたことがあったが、今日はここにはいないらしい。
それからいくつか部屋を覗いてみるが、彼の姿はどこにもなかった。
あまり表情を持たない門番だったが、しびれを切らしイライラばかりがつのっていく。
(長老にはせめて行先を伝えておいてくださいと、あれほど申し上げたのに…っ!)
「王っ!!どちらにおいでですかっっ!!悠久の使者から書簡が届いておりますよ!!!」
やけくそになった彼はどこにいるかもわからない主へと大声で叫んだ。
すると…
「うるせーぞ。さっきから何してやがる」
はっと頭上を見上げると、そこには漆黒の髪に紅の瞳を持つ…ヴァンパイアの王の姿があった―――