狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅢ―ⅴ エデン王の言葉
そしてカイの視線に気が付いたエデンは…
「…そっちのチビ、お前躾がなっていないようだな」
「…っ!」
わずかに眉間に皺を寄せた彼は切れ長の鋭い瞳を小さな剣士へと向けた。カイはというと鋭いエデンの眼光に睨まれ、怯えを含んだ瞳で震えあがっている。
「申し訳ありませんエデン様…こいつの躾がなってないのはこのブラストの責任でございます」
一礼し深くわびるブラストの背を見てこの時、自分の行いが彼を苦しめているのだと初めて気が付く。
(おっさん…おれのせいで…)
「…お、俺も申し訳…ございません」
いつも態度のことを言われると相手が誰であろうと突っぱねていたカイだが、いままで見たどの国の門番たちも己の王へ敬意を払い礼儀正しい振る舞いを見せてくれた。
(きっとこのままじゃダメなんだ…)
居たたまれず衣の裾をぎゅっと握りしめたカイは俯いてしまった。
「そういえば…剣術の教官やってるって言ったか?
ってことはこのチビは剣士か」
「ええ、まだ見習いですが…」
ブラストの言葉になるほど…と視線を向けるエデン。
「お前のその瞳悪くない」
上から降り注いだ偉大な人物の声にはっと顔をあげるカイ。
「立派な悠久の剣士になれ。役目を与えられて一人前というのではない。やり遂げてこそ一人前というものだ」