狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅦ―ⅸ 悠久の国とヴァンパイアⅠ


「それが無駄なんじゃよ…」


「無駄って…王様の"加護の灯"があれば吸血鬼(ヴァンパイア)なんか目じゃねぇって!門を閉めて、灯を傍に置けばいいんじゃねぇのか?!」


意気込んだカイは吸血鬼の国の門でアレスを無理矢理引き込んだ女吸血鬼の事を思い出し、興奮気味に言い放つ。


「待ってカイ、先生はなぜ無理だと思われるのですか?」


アレスは鼻息を荒くしたカイをなだめながら、冷静に大魔導師に理由を問う。彼とて"加護の灯"の力を知らないはずはないからだ。


「"加護の灯"の力は儂もよく知っておる。たったひとつの羽だとしても、やはり王の一部じゃからな。しかし…力の差の話ではないんじゃよ」


「…力の差の話ではない?」


大魔導師の考えが読めないでいるアレスとカイは訝し気に表情を曇らせている。


「やつらは化ける事が出来るんじゃ。悠久でもたまに見かけるじゃろ?蝙蝠(ニュクテリス)はもちろん、容姿や瞳の色を変えて普通の人間の姿にさえなれるんじゃよ。キュリオ様の"加護の灯"でさえ、何もしておらぬヴァンパイアを裁くことは出来ぬ」


「え…吸血鬼(ヴァンパイア)ってそんなことが出来るんですか…?」


ガーラントの言う"無駄"の意味を知り、ふたりはにわかに動揺を見せる。防ぎようのない彼らの侵入を今までどれだけの悠久の王が心を痛めてきたのだろう。昔のように捕食されることがなくなったのはいいが、それでも吸血鬼のいいようにされるのはどんなに辛かったか…


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