狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅦ―ⅹ 悠久の国とヴァンパイアⅡ


「うむ…。やつらの命が儂らより遥かに長い事は知っておるな?」


「…はい、そのくらいは」


これ以上何を聞かされるのだろうと二人の少年は眉間に皺をよせ息を飲んだ。


「悠久の民の生血を得て、生き長らえておるヴァンパイアたちをキュリオ様が良く思うはずもない。しかしじゃな…この世界に共に生きる者としてヴァンパイアを全否定するわけにもいかん。共存という立場をとりながらも…なんとも難しい事なんじゃよ」


「だな…でも、指をくわえて見てろっての俺は嫌だぜ!弱いやつは守ってやらねぇとな!!」


永遠に続くであろう二ヵ国の睨み合いにも、真っ直ぐなカイは使命感に燃え強く拳を握りしめた。


「そうじゃな。幸いにも悠久の王は<慈悲の王>。あの万能な治癒の能力は、この国になくてはならないお力なのじゃ。使者を蘇生させることは出来ぬが…瀕死の者ならば助けることができる。そしてそのような者を出さぬためにもお主らの力が必要なんじゃよ」


にこやかに二人へと視線を送りながら、期待の眼差しを注ぐガーラント。ただ力を高めるだけではない、さらに上を行くためには目的が大事なのだと彼にはわかっている。


「儂もまだ隠居するつもりはないが…アレス、カイ。ふたりともキュリオ様を支える立派な魔導師・剣士になるんじゃぞ!すべてはキュリオ様のお心のままにじゃ!!」


「おうっ!!!」


カイの威勢のよい返事に笑いながら、アレスは楽しそうなガーラントの様子を見てこう思った。


(先生はすごくキュリオ様のことが大好きなんだろうな。すべてキュリオ様のお心を理解した上で、彼に間違いがないことを誰よりも信じているんだ…)


いつかキュリオやガーラント、カイたちとそういう仲になれたら…と幼心に憧れの想いを抱いたアレスの夜だった―――


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