狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅨ―ⅵ アオイの異変と真夜中の叫びⅢ


バスローブのままアオイを抱えるキュリオの髪がわずかに乱れている。寝起きの彼でさえそのような姿を見せたことがないため、取り乱している事すら気が付いていないのかもしれない。


「…キュリオ様っ!!」


広間の扉が勢いよく開け放たれ、やがて大魔導師ガーラントが息を切らせて走ってきた。


「こちらでございます!ガーラント様!!」


家臣のひとりが駆け寄り、彼をキュリオのところまで案内する。
すると広間へ足を踏み入れたガーラントは、キュリオの癒しの光がとめどなくあふれ出て…広間を満たしている事に気が付いた。


「…キュリオ様…っ!ガーラントでございます!!」


「ガーラント…」


力なく顔をあげたキュリオ。
まるで廃人になってしまったかのような変貌ぶりに大魔導師は驚いた。
そしてその原因は…


「…アオイ様に一体何が…」


キュリオの腕の中でぐったりとしているアオイの姿。
癒しの光がいつまでも消えないのは、キュリオが力を注ぎ続けているからだけではない。彼女の状態が悪いまま変化がないという現れだ。


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