狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅨ―ⅶ アオイの異変と真夜中の叫びⅣ
もっていた古杖を絨毯の上に置くと、ガーラントはアオイの胸元に手を当ててみる。
「…心の臓の動きが弱い…キュリオ様のお力が効かぬなど怪我や病ではありませぬな…」
呼吸も今にも止まってしまいそうなほどに弱々しく、体はぬくもりを完全に失っていた。
「彼女は…アオイはひどい夢を見ていたようなんだ…」
「夢…?」
「一度呼びかけて目を覚ましたんだが…そのまま泣き続けて…」
「…そうでしたか…」
「…まるで夢と現実の区別がつかないようだった…。ひどく怯えてて…必死に何かを訴えていたんだ…」
すがるようなアオイの瞳と手が脳裏から離れない。
(…間違いなく彼女は私に懇願していた…一体何を…)
幼いアオイの意志を汲み取ってやれなかった事を後悔し、絶望するキュリオ。彼女の願いを叶えてやれればこのようなことにならなかったのでは…と思わずにはいられなかった…