狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅠ―ⅸ 一抹の不安Ⅰ



「キュリオ様っ!!」


精霊の国の門が閉ざされると同時に彼の元に走ってきたのは大魔導師ガーラントだった。精霊王が姿を見せる確率が極めて低いと予想していた彼は、キュリオが次に冥王を頼る可能性も視野に入れていたようだった。

しかし…主(あるじ)の心穏やかな笑みを目にし、自分の予想は大きくはずれたのだと悟った。そしてキュリオの腕の中で笑い声をあげるアオイの姿を目にし、緊張の解けたガーラントの瞳から感涙の涙がとまらない。


「…精霊王に会えたのですな!!…よかった、姫様っ…」


「あぁ。…心配かけたね…ガーラント」


アオイを抱いたまま大魔導師の肩に手を置くキュリオ。そして事情を知る後方の家臣たちの目にも薄らと涙が浮かんでいた。



「さぁ悠久へ戻ろう」



真っ暗な異空間の中を明るく照らすような…そんなキュリオの声が響いた。


もし…彼が精霊王に会うことが出来ず、冥王を頼ることとなっていたら彼女の小さな体は耐えられなかったかもしれない。心の臓が止まってから長い時間が経過してしまえば、例え命を繋いだとしても…重い後遺症に悩まされたり、最悪…意識が戻らない可能性だってあったのだ。



…そしてガーラントには手放しで喜べない理由が他にもあった。


< 241 / 871 >

この作品をシェア

pagetop