狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

XXXI―ⅷ ティーダとアオイ・ひとつの運命の歯車Ⅱ




眉間に皺をよせ、腕の中の幼子にそっと顔を近づける青年。



いつの間にかヴァンパイアらしく口元には鋭い牙が見え隠れし、彼の白い指先に光る長い爪。




青年はその爪でアオイを傷つけぬよう、指を折り曲げ…人差し指の関節あたりで彼女の頬を優しくなでた。




「…っ」




大きな瞳を潤ませ、何か言いたげに胸元を掴んでくる幼い少女。




「なぁアオイ…俺の名前わかるか?」




「…?」




初めて彼に名を呼ばれ、アオイは驚いたように目を丸くしている。




「俺の名はティーダ」




「…キュリオと敵対してるヴァンパイアの王だ」




彼は不安に揺れるアオイを諭すように静かに語りかけた。



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