狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

XXXII―ⅶ 揺れる心Ⅶ




―――マダラの家臣たちが深々と頭を下げる間をティーダは歩いている。




冥王の大鎌により負傷した腕が外気に触れ、血に濡れた傷口から体温が流れ出るような…ひんやりとした風を肌に感じた。




「……」




傷ついた腕に目を向けながら…つい、アオイの事を想像してしまう。




「…結構深い傷だったな…」




ざっくりと切れてしまっていた彼女の目尻の傷は、その血の量からしてかなりのダメージであることがわかる。そしてその傷をつけたのは…




「城の中で悠久の民に狙われるなんて…お前、一体どういう境遇にいるんだよ…」




そう呟きながら己の傷口を舐めたティーダは、ふと…ひとつの違和感に気が付いた。




「…?」




「…傷がない…?」




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