狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

XXXIII―ⅱ  鍛冶屋(スィデラス)・ダルド Ⅱ




風にのって運ばれてくる人間の匂いとその足音…。ダルドは凛々しく立ち上がる狐のような耳と白銀の髪をそよ風に揺らし悠久の城のある方向を見つめた。



こうして人の姿を保ち、優れた嗅覚や聴覚をもつ彼はかつて野生の銀狐(シルバーフォックス)だったが、百年以上生き永らえ…聖獣の仲間入りを果たした立派な人型聖獣なのである。




そしてガーラントの杖も彼により制作されたもので、年老いたガーラントよりも若く美しい姿を保つ彼は…大魔導師より遥かに実年齢は上なのだった。




キュリオのように長い命を持つ彼はさすが聖獣と言われるだけあって、日頃から人目を避けて森の中でひっそり暮らしている。



そしてその高貴な彼の姿を知る人物はごく一部で、悠久の城に仕える上位者たちはこれに該当する。




砕いた貴重な鉱物を使い慣れた鞄の中に仕舞いこむと、ダルドは風のように森の中を駆けていく。





「大丈夫。僕のほうがはやく家に着く」





一人納得したように呟くと、彼は山小屋へと向けて速度を上げて行くのだった―――






< 368 / 871 >

この作品をシェア

pagetop