狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅠ



実習室を出て、トボトボ教室へと向かったアオイ。顔を上げぬまま扉を開き、自分の席へと足を向けた。すると…


「なんだアオイ。サボりか?」


アオイの席に腰掛け、長い足を投げ出したまま椅子を揺らしている青年の姿があった。


「…すみません、教室を間違えました」


踵を返し、そのまま立ち去ろうとするアオイに青年は笑って答える。


「いや?間違っちゃいないぜ。ここはお前の教室で、お前の席だ」


彼の声にピタリと足を止め…振り返ったアオイ。


「ほら。これお前のだろ?」


アオイの通学鞄と重箱の弁当を手に持ち、ちらつかせた青年。アオイは彼をじっと見つめてみるが、心当たりがあるような…ないような…その綺麗な青年は妖艶な笑みを浮かべたまま優雅に立ち上がった。


艶やかな黒髪に陶器のような美しい白い肌。そして鮮血のように鮮やかな唇が彼の色気に拍車をかけている。


(だれ?…綺麗なひと…)


「さっさと行くぞ。城に戻るんだろ?送ってってやるよ」


「…え?はい、でも…あの…っ」


差し出された鞄と弁当を受け取ろうと両手を出したアオイだが…彼は手離さず、そのままひょいと彼女の両手を交わすように高く持ち上げ…からかうような仕草を見せつつ歩き出した。


「少しは大人になったかと思ったが…やっぱどんくさいままだな」


ふっと笑い、口角を上げた彼はどことなく嬉しそうな顔をしている。


漆黒のスーツを身に纏った彼の手足はとても長く、緩めに絞められた紅のネクタイが嫌味もなく趣味の良さをうかがわせた。


(意地悪そうな方だけど…なんて品のある立ち振る舞いなの…)


「…あれ?」


ふいに視界に入った…とあるものを見てアオイが何かを拾い上げる。



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