狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅡ
(黒い羽…教室に鴉(クロウ)でも迷い込んだのかな?)
あたりをキョロキョロと見回してみるが、二人の気配以外はなにも感じられず、アオイはほっと肩を撫で下ろした。
(よかった…無事出れたみたいね)
「ん?おいアオイ。何してんだ?」
いつまでもついてこない少女を不思議に思った青年が振り向き声をかける。そしてアオイの手に握られた黒い羽を見ると…
「昔…鴉(クロウ)の声に泣いていたお前を思い出すな…」
幾度となく幼い彼女に逢うため、ガードの堅いキュリオの傍から近づいては…気配を殺し、鴉(クロウ)となって舞い降りていた数十年前。
「むかし…?」
青年の声に首を傾げているアオイ。そんな彼女へと数歩近づいた男。
「目元の傷も、手の甲の怪我も…俺の見てる前でやらかしちまったからな」
そして、ゆっくり顔が近づき…彼の慈しみを込めた唇がアオイの目元と手の甲へと落ちてきた。
片膝をついた彼は一度手を離すと、再びアオイへとその手を差し伸べてくる。
「今はお前を守る騎士(ナイト)になってやるよ。お手をどうぞアオイ姫」
(私きっと、この方を知っている…)
「……」
誠実な青年の眼差しがどこか懐かしく感じ…思わずその手をとってしまったアオイだった―――。