狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXXⅦ
「いいえ…」
「私がなぜキュリオ様にこの話をしたのか…今と別の道をすすめたのか…お分かりになりませんか…?」
「…どういう意味だ?この物語はお前の童話(フェアリーテイル)のはず…」
そこまで言いかけたキュリオは、ようやく何かに気づいた様子で口を噤んだ。
(まさか…嘘だ…そんな事あるわけが……)
ハッと息を飲んだキュリオは今朝のアオイとのやりとりを思い出し、信じられないとばかりに彼女の瞳を見つめ返している。
『…セシエル様?って?…それよりお父様、そのお姿…』
(最初からアオイは私を"お父様"と呼んでいた…セシエル様の名を聞いても首を傾げるばかりで……そういう事か…)
にわかに信じがたい話に抱えきれぬほどの衝撃を受けたキュリオだが、彼は薄く笑い…まるで何事もなかったように話を再開する。
「お前の童話(フェアリーテイル)、なかなか面白かったぞ。しかし内容が不十分だ」
「そう…ですか」
結局何も伝わっていないだろう事を予感したアオイは気落ちするように肩を落とした。
「…心を通わせる、通わせないというのはあくまで本人の意志だ。ただそれだけでその道を進むなという話にはならないのではないか?」
「…っ…」
とたんにビクリと背を震わせたアオイ。
セシエルの恐ろしい言葉が脳裏をよぎる。
『民と戦うためさ』