狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その19

雲の合間からのぞいた白い月光を浴び、言葉を発した人物の姿が徐々に明らかになる。


「…キュリオ…さ…ま?」


光を受けた長い銀髪が淡い輝きを放っており、絶世の美を誇る彼の美しさをより一層高みへと導いていた。


「…アオイ様とご一緒ではなかったのですか…!?」


(どうしてキュリオ様がこんなところに…カイでは絶対に力不足だっ!!)


焦ったアレスは"あの男"に注意を向けながらキュリオのもとへと小走りに駆け寄っていく。


しかし"キュリオ"は頷きもせず、アレスの言葉を聞き流しているようにみえた。


「……」


もう一方で、和の装いの青年は無言のまま銀髪の男を凝視している。すでにアレスの姿など視界から除外しているのがわかった。



(…違う…この男)



「…排除する…とは簡単に言ってくださいますね。貴方に負けない程度の自信ならこちらにもありますが?」



組んでいた腕をおろし、一歩近づいた青年。かつてアオイへと向けられていたその優しい面影など微塵も感じさせない冷酷なものだ。



「…キュリオと同等の力を持つ君ならば…私と戦う事は恐らく可能なのだろうね。そして…」



たちまち"キュリオ"の周りを激しい光の渦が爆風とともに沸き起こり、右手を掲げた彼の手のひらに巨大な光の柱が立ち上がった―――


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