狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その34

「…剣を下ろせ。その"聖剣"を叩き割られたくなければ…だけどね」


銀色の光に包まれたセシエルの神剣が"聖剣"の息の根を止めようと、真横から上段の構えに入る。


(…アオイさん…)


絶望の中に煌いたたったひとつの光―――


"―――センスイ先生―――…"


(最初はただの興味本位で近づいた…
彼女が悠久の姫だとは予想もしていなかった)


"…彼女のまわりをあまりうろつかないで下さい。あなたが気安く触れていいような立場にあるお方でない"


思わず口を出たその言葉の意味が今はわかるような気がする。

あの少女を取り巻く男たちから彼女を遠ざけたかったからだ。


"…っどうして簡単に諦めてしまうんです!?やってみないと…わからないじゃないですかっ!!"


そして別れ際のアオイの懸命な叫び声が鮮明に蘇り…センスイの心を震わせる。



―――ただ似ているという理由だけで近づいた少女に光を見た―――



『…ようやく見つけた愛しい存在…彼女が向けてくれたあの優しい眼差しさえも…貴方がたは私から奪おうというのか……』



「…センスイ…」



心が悲鳴を上げているような…痛みと苦しみが入り混じったセンスイの言葉だったが、声色がおかしい。
やがて心配する眼差しを向けていたクジョウの表情が険しくなり……



『…どいつもこいつも…忌々しい…っ…貴様らも…期待させて…っ!!…結局彼女を救えないっっ!!!』



「何を言っている…?」



キュリオが首を傾げるのも無理はない。
センスイは明らかに記憶が混同しているからだ。


「落ち着け!!」


漆黒の青年の顔には焦りの色が広がり、剣を構えたまま傷ついた彼を怒鳴った。

それもそのはず、普段の彼からは想像もつかないほど…センスイの力が急激に高まっているのだ。


(…不安定なこの空間でこれ以上はまずい…)


「許せ…センスイ」


剣を持ちかえたクジョウの拳がセンスイの腹めがけて唸る―――。


「…っよせ!!待ってくれ!!」


クジョウの拳を制止する声が突如、凛として響き渡った。


彼らの傍に舞い降りたのはなんと…


「エデン…なぜ君がここに…」


聞き慣れた声にキュリオがわずかに驚いた様子を見せる。それもそのはず…その声の主は大きく翼を広げた<雷帝>エデンだったからだ―――。


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