狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

描かれた理想

「うん…それでも、王様のお力があれば何とかなるんじゃないかなって私は…」


「えーっ!王様の力があったとしてもあたしは嫌だなー。鋭い牙で噛み付かれるなんてごめんだよ!」


「でも…ヴァンパイアを生かすことが出来るのが悠久の民だけだとしたら…王様の力の意味も納得かなって」


「それって逆の話じゃないっけ?ヴァンパイアにやられた民を救うために~ってやつでしょ?」


もちろんミキのいう話はもっともで、初代・悠久の王が神剣を授かるきっかけとなった因縁の対決は最古にして最大の戦いである。

それをアオイは逆手にとって考えているのだ。


「うん。だけど…悠久の王様の力が彼らを救う事にも繋がるんじゃないかな…?どうしたらいいかは…私にもわからないけれど…」


「もしかして…食糧として選ばれた人間が死なないように王様に治癒してもらうってこと?」


「う…うん、言い方は悪いかもしれないけど、死ななければ何とかしてくれるかなって…」


「えぇーっ!でもそれってやられ損じゃない!?悠久の人間になんのメリットがあんのよー!?
…ってそっか。アオイんちは"お父様"がアンタがヴァンパイアだとしてもって言ってたくらいだもんね…理解があるのは当たり前か…」


「…理解があるかどうかは…」


たしかにキュリオはアオイがヴァンパイアだとしても、自分の血を与えれば良いと言っていたことがあるらしい。


(あれほどまでにヴァンパイアを嫌っているお父様が…でもそれは私が小さい頃の話…)


(今の私がヴァンパイアになってしまったら、お父様は私を…)


思ってもみなかった事だが、アオイが後者だった場合…キュリオは自分を殺すのだろうか?という疑問がわずかに残る。



「……」


黙り込んでしまったアオイにシュウがわずかに緊張を緩め、気遣うように手を引いた。


「ごめん急に…ありがとなアオイ…」


「…ううん?」


「いつか…こうして皆で笑い合える日が来ればいいのにな…」


「…?そうだね…」


しっかりと繋がれたアオイとシュウの手。果たして…この二人が悠久とヴァンパイアの仲を取り合う絆と成り得るのだろうか?


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