狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ガウンの使い道Ⅰ

―――そしてキュリオの寝室…


銀縁の美しいソファでキュリオはくつろいでいる。

部屋は暗闇に満ちていたが彼の真横にある小さな燭台にのみ火が灯され、キュリオの白い肌に色を射(さ)していた。



―――パラ…



ページをめくる乾いた音がキュリオの手元から聞こえる。

彼は読書でもしているのだろうか?


すると…


彼の膝の上に横たわる何かがもぞもぞと動き出した。


"……"


彼女が動き出すと同時にキュリオの腕が下がり、手にしていた本が音もなく脇机に置かれる。


そして彼の視線が少女に向けられると、上を向いていたはずのアオイは自分の膝を引き寄せ、胎児のように丸くなっていた。


年相応の平均的な身長である彼女だが…今その体にかけられているキュリオのガウンのせいで、とても小さく見える。


(大きくなったと思っていたが…やはりアオイはアオイのままだ…)


キュリオに先程のような刺々しさは感じられない。

それもそのはず、原因の"彼"を城から追い出したせいだろう。


穏やかな笑みさえ浮かべたキュリオは、わずかに顔を出した彼女の肩にガウンをかけなおす。


こうして眠る前のひととき、肩を並べて読書を楽しむ二人の姿がよく見受けられたため、目を覚ましたあとの彼女に言い聞かせるのは簡単なのだ。



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