狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅸ―ⅵ 加護の灯


「さて、そろそろ出発しようかのぉ」

話が一区切りついたところでガーラントがキュリオへと向き直った。

「キュリオ様、それではよろしくお願いいたしますのじゃ」

ガーラントの声に頷いたキュリオは部屋の隅に控える家臣の一人に合図を送った。
すると彼は深く一礼し、部屋の奥へと姿を消し…それから程なくして彼は数人の家臣とともに戻ってきた。

「お待たせいたしましたキュリオ様」

彼らは手に使者の外套と、白い布で覆われた細長い何かを持っている。

(あれが加護の灯…)

アレスはじっと細長い塊を見つめていた。


「こちらをお召になってください」


家臣のひとりに外套を渡され、受け取ったアレスはそれがとても軽い事に気が付く。
真っ白なしっかりした布地に銀色の刺繍が袖や裾に施されている。

(銀色…悠久では王の色とされ、もっとも高貴なものだ。使者は王の使い。だから銀の刺繍が許されている)

アレスとカイは初めての使者の外套を手にし、色の持つ意味に身が引き締まる思いがした。
そしてそれを羽織りキュリオへと視線を戻すと…

白い布が巻かれているあの細長いものの正体が明らかになる。
銀色の長い柄の先にランプのようなガラス張りの飾りがついていた。

「…あれが加護の灯(ともしび)…」

小さく呟いたアレスは食い入るように注目している。
しかし、その灯の正体は何なのかわからない。見たところ中身は空のようだ。


「よく見てろよお前ら」


ブラスト教官がカイとアレスに囁いた。




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