薫子様、一大事でございます!
一等地に一軒家を構えていることから、相当な資産家だと推測できた。
このマンションには、私たちの他にも2人の住人がいるらしい。
一人が浪人生で、もう一人が夜の仕事をしている若い女性ということだけは芙美さんから聞いているけれど、ここに来て半年、未だその姿を見かけたことはなかった。
「それで、カブトムシはどこなんだい?」
ソファに腰を下ろした芙美さんがキョロキョロと周りを見渡す。
「あ、それなんですけど、カブトムシじゃなかったんです」
「あれまぁ」
「がいちゅうなんですって」
「害虫? それじゃ、ゴキブリか何かかい?」
「……ゴキ、ブリ?」
あれが噂に聞く"ゴキブリ”だったの!?