薫子様、一大事でございます!

「あ、もちろん、本当の恋人ということじゃないです」

「……では、」

「恋人のフリをしてもらいたいんです」

「フリ、ですか」


頷きながらも、北見さんの視線は何かを考えるように宙を舞った。



彼の名前は、早川慎吾。
32歳。


背もそこそこ高くて、全身から溢れるのは爽やかなオーラ。

真面目そうだし、恋人が出来なくて困るようには見えないけれど、事実困っているそうだ。


最近、久しぶりに連絡を取り合った大学時代の友人に、つい見栄を張って“彼女がいる”と言ってしまったそうで。

その友人と、近々彼女同伴で会う約束をしてしまったらしい。

< 254 / 531 >

この作品をシェア

pagetop