薫子様、一大事でございます!

「本当ですか?」


しつこく目線を追いかけると、「で、今日はどうだったんだ」と急な話題転換を持ちかけた。


「早川さんのことですよね?」

「他に何がある」


……やっぱりどこか機嫌が悪いみたい。

言い方がいつもよりずっと刺々しい。


「フリは完璧にこなせそうなのか?」

「……どうでしょう」


正直言って自信は全然ない。


手を繋ぐのだってイヤイヤだというのに。

あれ以上の密着はないとは思うけれど、恋人同士に振る舞うのなら、もしかしたら友達の前ではもう少しスキンシップが必要なのかもしれない。


そう考えると、どうしたって気が重くなる。

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