薫子様、一大事でございます!
「一緒にっていったって、隣にいるわけじゃないぞ?」
「……ですよね」
嬉しくて、つい喜んでしまったけれど。
「今日みたいに、つかず離れずのところにいるから」
何よりも心強い。
北見さんが近くにいてくれれば、きっと大丈夫。
安心して早川さんの彼女のフリもできそうだ。
「で、それは?」
持ったきりになっていたトレーを北見さんが指差す。
「北見さんのコーヒーと、」
「カコちゃんのお茶?」
「はい」
笑顔で頷いた。
自分の分まで持ってきてしまった。
中入る? と北見さんが親指を立てて部屋の中を指す。
「いいんですか?」
「そのつもりで来たんじゃないのか?」
「そのつもりでした」
肩をすくめた私に、クスッと笑う。
北見さんは私からトレーを受け取ると、中へと入れてくれたのだった。