薫子様、一大事でございます!
「あ、いえ、何でも……」
「緊張する?」
「……はい」
「大丈夫だよ、僕に任せて」
膝に置いていた手に早川さんの手が重なる。
咄嗟に手を引くけれど、ガッチリと掴まれてしまった。
「今はまだいいけど、友達の前でその態度は控えてくれるよね?」
小刻みに頷いた。
ほどなくして車は目的地へ到着。
タクシーから降り立ち、大きく深呼吸。
私は早川さんの恋人。
私は早川さんの恋人。
何度も念じて、自分に言い聞かせる。