薫子様、一大事でございます!

完全に目覚めたらしい。

男の人がむっくりと上半身を起こした。


同時に「イテッ!」と声を上げる。


「――だ、大丈夫ですか!?」


滝山と二人、声を揃えた。


反射的に出した手が、不幸にも彼の痛い箇所に当たってしまったらしく、更に「イテッ!」と呻く。


「ご、ごめんなさい」


慌てて、その手を引っ込めた。


「……あんたたちは?」

「えっと……私たちは、その……」

「夕べ、あなた様を拾った者です」


しどろもどろになる私に出してくれた滝山の助け舟に「拾った?」と、彼が訝しむ。

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