薫子様、一大事でございます!

「あ、いや、何と申しましょうか……。たまたま通りがかったところにあなた様が倒れておりましてですね、それで、ここまで運んで来た次第でございます」

「……そうか。それは悪かった」


彼は決まりが悪そうに頭を掻いた。


「あの、大丈夫なんですか? そこ、痛そうですけど……」


青く変色した頬を指差すと、「このくらい大したこと――ッ」と言いかけて、顔を歪める。

やっぱり痛むらしい。


「これ、使ってください」


冷蔵庫で冷やしておいたタオルを手渡すと、「悪いな、サンキュ」と受け取った。


「どうして、あんなところに倒れていらしたんですか?」

「……うーん、まぁ……ちょっとした意見の相違、というか、内輪揉めというか」


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