薫子様、一大事でございます!

とにかく、これは私の方で処分しておきます」とようやく小言の口を閉じた。



「それでは、またのちほど」


そう言って滝山は事務所を出て行った。


この後は部屋に帰って少し休むのだろう。

というのも、滝山は朝まで警備員の仕事をしてきたからだ。


採算のまったくとれないこの事務所をやっていけているのも、滝山が他で仕事をしてくれているからだった。

だから、いくら小言を言われても黙って聞いているしか私にはできないのだった。



「薫子ちゃん、薫子ちゃん!」


大きな声で滝山と入れ違いに入って来たのは、ここの大家さんである吉川芙美(よしかわふみ)さんだった。


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