インセカンズ
緋衣は、明後日に迫った亮祐とのデートに向けて、会社帰りに予約していたネイルサロンでシンプルなフレンチネイルを施してもらう。

仕事の都合上難しいというのもあるが、学生時代から、ゴテゴテした派手なものよりは、ワンカラーやフレンチネイルが好きだった。

ピカピカな爪になると、気分が上がってくる。
それは、お気に入りの、甘いピンク色のレースの下着を身に付けたときの感覚に近い。

ネイルの後は百貨店に寄って、きれいめ系の膝丈ワンピースを購入する。プライベートではデニムを中心としたフレンチカジュアルが多い緋衣だが、明後日に向けて気持ちを高める為にも、まずは形から入ろうと決めた。

亮祐の実家はこちらにあるとはいえ、緋衣の部屋に泊る可能性もある為、昨日の段階で部屋の大まかな掃除は済ませてある。あとは、当日の出勤前にモップを掛ければ良いだけだ。

これもタイミングなのか、安信とはここ数日の間会社の朝礼で顔を合わせる程度だった。緋衣は通常業務をこなしていたが、安信はクライアントとの最終調整が大詰めを向えていることもあり、慌ただしくしていた。

安信に触れられた箇所は、今でも熱を帯びてその感覚を緋衣の皮膚ひとつひとつに留まらせたままでいて、燻ぶる気持ちを振り切るように、亮祐と会う日の準備を粛々と整えていった。


< 107 / 164 >

この作品をシェア

pagetop