インセカンズ
「もう、ずっと前から思ってたんだ。何でも話し合えて信頼し合える相手と、長期的な関係を築いていきたいって。アズが寝ぼけて他の男と俺を呼び間違えたとき、なぜか、こいつだ!って思ったんだよな。あのとき強烈に嫉妬して、眠っているアズを犯しそうになったくらい、俺のもんじゃない事が腹立たしかった。それから、ずっと想ってたよ。アズが、俺が探していた相手だったらいいってさ」

真摯な眼差しで語る安信の姿に、緋衣は胸の奥から込み上げてきたものを隠すことなく、素直にそれを涙に変える。

「嬉しい……!」

緋衣がそう言って顔を綻ばせると、瞳いっぱいに溜め込んだ大粒の涙がぽろりと頬を伝う。

「そんなに喜んでもらえると、俺も嬉しいよ」

安信は、緋衣の後頭部を引き寄せて、自分の胸に閉じ込める。

「やっぱ、結婚前提にお付き合いじゃなくて、もうこのまま区役所行って入籍でいいんじゃね?」

「ええっ?」

緋衣は思わず、驚きからぱっと身体を離して安信を見る。

「思い立ったが吉日って言うだろ?」

すると、彼は、思わせぶりな顔で緋衣を覗き込む。下から覗き込むような魅力的なその角度で唆されては、すぐさま頷いてしまいたくなる。

「ヤスさんにそう言ってもらえて私はすごく嬉しいんですけど、うちの父がかなりの曲者で……」

緋衣は、そこまで言って口を噤む。実家を出てからは大分マシにはなったものの、未だに親バカな父親の頑固頭が脳裏を過る。

「殴られるくらい、後でいくらでも殴られてやる。俺は、アズが喜ぶ顔が見たい。幸せにしてやりたいと思う。すぐ側でそれができるのは、結婚しかないだろ?」

安信は颯爽と立ち上がると、戸惑いを見せる緋衣の手を取る。

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