インセカンズ
いい年をして何をしているのだろう。いや、いい大人だからぐだぐだになっているのか。緋衣はまだ余韻が残る体を叱咤すると、安信がシャワーを浴びている間に、窓をからりと開けて空気の入れ替えをする。

こういう雰囲気は、気付く人間はすぐに気付くものだ。これから恋人が来るというのに、使用済みのティッシュやその他もろもろをゴミ箱に入れたまま放置することなどできるはずもない。シーツはきっと、付着したお互いの体液や、緋衣のボディークリームの匂いがついてしまっているだろう。呑気にシャワーを浴びている安信が不思議でならない。意外と無頓着というか詰が甘い。

「ヤスさん、小さなゴミ袋ありますか?」

安信が濡れた髪でリビングに戻ってくると、緋衣はすかさず詰め寄る。

「あるけど。何に使うの?」

「ティッシュ! この部屋に残しておけないでしょ」

「ああ! やらしーね。持ち帰るんだ? 俺のせー」

緋衣は、安信がにやにやと言い終わらないうちに口を挟む。

「ただのゴミですから!」

「はいはい、ただのゴミね」

ムキになる緋衣とは対照的にからかい半分の安信は、キッチンの棚から持ってきたレジ袋を彼女に手渡す。

「お手数お掛けします」

首を竦める安信に、緋衣はあからさまに溜息を吐く。

「本当です。そろそろ彼女さん、来ますよね。ヤスさんも、シーツ洗濯機に入れて回してください」

「あとでな。大丈夫、合い鍵持ってる訳じゃないし、俺が開けない限りエントランス止まりだから」

「住人の出入とタイミングが合えば、入ってこれますよね」

「まぁ、確かにな」

緋衣はそそくさとベッドルームに急ぐが、その間安信は特段慌てる様子もなくソファにどさりと背中を凭れて煙草に火を点けた。
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