メランコリック
せっかく、杉野さんと二人きりだったけれど、相良が闖入してきた以上、ぐずぐずスタッフルームに留まる理由はない。


「ご馳走様でした。それでは、表に戻ります」


「いえいえ。俺、今日は品川店回って本社に行っちゃうけど、何か申し送りある?」


杉野さんの柔らかい声を、相良が食い気味に消す。


「そういうのって、兵頭さんに聞くべきじゃないっすか?俺や藤枝より先輩なんだし」


「兵頭は遅番だろ?それまで俺はここにいないんだよ。相良に聞いて真っ当な返事が返ってくるなら別だけど」


二人の間に剣呑な空気が流れる。こうなると面倒なので、私はささっと答えた。


「特にありません。店舗の取材は明後日ですよね?」


「そうそう、その時はまた俺も来るから。それじゃ、よろしくね」


私は会釈して、5階フロアに出た。
今日はいい日だ。杉野さんにコーヒーを奢ってもらえた。
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