メランコリック
「もー、いいじゃないスかー」


出た声は思いのほか冷淡だった。


「俺も子どもじゃないんで。誰と帰ろうが、誰と付き合おうが、いいじゃないスか」


「だって!私が付き合おうって言ったのは断ったじゃない!」


「職場の先輩にあんなこと言われて、穏便に断る方法が他にあります?」


兵頭さんの頬がカッと朱に染まる。
悔しさを隠そうともしないその顔。


「ムカつく。あんたなんなわけ?藤枝みたいな根暗女と仲良くしてればいいよ」


俺はその言葉に背を向けた。


「あ、じゃーそうします」


スタッフルームのドアを閉め、心の底からすっきりした。
とはいえ、明日からまた面倒だ。職場の先輩を敵に回してしまった。
今まで、慎重にやってきたのにな。
藤枝のことを言われたら、カッと頭に血が上った。

まあ、いい。
バイトスタッフにあれこれ押し付ける彼女より、俺の方が仲間ウケはいいし、笹原マネージャーによると兵頭さんの異動の話もあるらしい。
そんなに長く険悪な空気を我慢しなくても良さそうだ。

俺は、いたって呑気な気持ちで帰途に着いた。



< 133 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop