メランコリック
「今なら、俺のこと信じられる?」


汐里の細い身体に腕をまわし、華奢な肩に顔を埋める。
懐かしく愛しい匂いに、胸が、心が激しく脈動した。


「わかんない……でも信じたい。勇気出したい」


汐里がしゃくりあげながら、それでも全身で言い切った。
俺は汐里の頭を胸にかき抱き、今までの全部を込めて想いを伝える。


「好きだ。おまえの未来の中に俺を加えてくれ」


汐里が強く頷く。


「私も駿吾が好き。ずっとずっと傍にいてほしい」


俺たちはいつまでもそうして抱き合っていた。

夏の日は傾き、落日が迫る。
離れがたく結ばれた俺たちの手が、長く伸びた影にはっきりと映っていた。

やがて夜がこの影をかき消しても、俺たちの手がほどかれることはもうけしてない。





<了>


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