メランコリック
「よっしゃぁ!」


駿吾が声をあげ、私を抱き締めた。
車両にはご年配のご婦人三人組が乗っているだけだったけれど、私は恥ずかしくて駿吾の口を押さえ、身体を離そうともがいた。


「もう!くっつかないで!」


「うるせー、黙って抱かれてろ」


駿吾はきつく私を抱き締め、飛び跳ねんばかりにはしゃいだ声。私たちを微笑ましく見守るご婦人たちの視線に、私はいっそう赤面した。

私の最寄り駅に到着すると、並んでホームに降り立つ。


「汐里のじいちゃん、ばあちゃんに『汐里をください』ってやるのは、正式に日を決めるから。スーツ着て、手土産持ってくる」


「うん、私も駿吾のご両親に挨拶に行きたい」


駿吾が嬉しそうに頷いた。私も自分で頬が緩んでしまっているのがわかる。
私たちはホームで見つめあう。

私は駿吾が家まで送るというのを固辞した。
こんなに幸せな日は、一緒にいればいるほど離れがたくなるから。

駿吾は不満そうだ。私は彼の顔を見上げて、思い切って伝える。
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