メランコリック
30分後、俺は自己嫌悪で死にそうになりながら、コンビニへと歩く。
出すモン出したら、腹が減った。

正直に言えば、藤枝をいわゆる夜のオカズにしたことは何度かある。
たいてい、酒に酔っていたとか自制が効かない状況で、ふと思い浮かべてしまって……という理由だ。

しかし、今日は思いっきりシラフで妄想してしまった。
うっかり借りたAVのせいだ。
しかし、ジャケ借りしたのは俺なわけで、ジャケットに映る女優と藤枝を無意識に重ねてしまったなんて、……そんなことあるだろうか。

俺、藤枝としたいとか思ってんのか?

あんな女と?

あいつの暗い表情に嫌悪を感じているのは本心からだ。
なのに、ヤリたいとか思ってる?

相当疲れてんな、俺。


駅前のコンビニに入ると、本当に偶然、一番会いたくないヤツに会ってしまった。


「あ、相良くん……」


眉をかすかに上げ、こちらを見ているのは藤枝だ。
レジを終え、自動ドアに向かって歩いてくる。
あいつは休日のスウェット姿の俺を見て、言葉を探している。

ああ、この女、俺と最寄り駅が一緒だって知らねーんだ。
俺は一年も前から知ってるけど、確かに近所で会うのは初めてだ。
< 38 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop