メランコリック
「今日休みだったよね。家、この辺なんだ」


俺は頷き、すっとぼけた返事をする。


「そうだよ。おまえは?彼氏んちでもあるのか?」


彼氏なんかいるわけない。
いたら、杉野にあんな熱視線を送ってない。


「ごめん、私もこの辺なんだ」


「うわ、最悪。最寄り駅かぶってたとか、マジか」


俺は憎まれ口をたたいて、カゴを手にとる。
藤枝はいつもの無表情で下を向いた。


「それじゃ」


消え入りそうな声で言って、藤枝は出て行った。
あいつの手にはペットボトルとサラダの入ったビニール袋。

あんなもんしか食わないから、声が小せぇんだよ。

しかし、今さっきの映像がちらついていた割には、焦らず話せた。
それは自分を褒めてやりたい。

よし、金輪際、あんなキモ女をオカズにするのはやめよう。
AVを借りる時は細心の注意を払い、少しでもヤツが脳裏をかすめたら中止しよう。

俺は妙な誓いをたてて、コンビニで買い物を済ませた。
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