メランコリック
いじめに近しい迫害は続いている。

私の髪を切った女子二人は、さすがにほとぼりが冷めるまでと近付いてこない。
先輩の兵頭さんも、基本は私を無視。
バイトの子たちはこそこそと悪口。たまに私の私物を隠したり、本社通達を見せなかったりと、可愛いいたずらをするくらい。

そうなると、私に積極的に悪口雑言を浴びせかけるのは相良ひとりとなる。


「陰気。じめじめしたキモイ顔で接客してんじゃねーよ」


お客さんが帰るなり、今日も相良に言われる。
そんな暗い顔をしていただろうか。声が小さいのは気をつけているつもりだ。


「ごめん」


「ホント、マジでおまえどっか遠い店舗に異動願い出せ。でなきゃ、辞めろ。空気悪ぃんだよ。目障り過ぎる」


私は無言で頷き、相良に背を向ける。
裏で在庫整理をやってしまおう。バックヤードはスタッフルームと間続きで、表からも入り口がある。
幸い5階フロアに人は足りている。
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