メランコリック
私がバックヤードに入るとなぜか相良が追いかけてきた。


「逃げんなよ」


「逃げてない。お客さん少ないし、在庫整理、やっちゃおうかと思って」


私は目をそらし、うつむきがちに答える。

すると、相良の手が私の短くなった髪に触れた。
毛先を梳くようにさらっと。
一瞬のことだった。

思わぬ接触に顔を上げると、相良はなんともいえない顔をしていた。
困惑、嫌悪、それから……。


「ダッセー髪型。ショートにするなら、もうちょっとやりようがあるだろ。どんだけ、女としてナシなわけ?」


あんたには関係ない。
そう思った。

しかし、相良は関係ないとは思っていない様子だ。
私は相良の茶色い瞳を見つめる。

言葉とは裏腹に、その瞳の中に映るのが、悔恨であるとわかってしまった。
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