メランコリック
「どうでもいいけど、相良さぁ」


緑川はきつい口調で続ける。


「汐里をいびるようなことしてんなら、やめなよね」


「は?してねーし」


藤枝が、言ったのだろうか?
緑川に相談していたのだろうか?

相良駿吾に『いじめ』にあっているって。『モラハラ』だって。

もし、そうだとしたら、藤枝は俺に無関心ではなかったことになる。
俺の嫌悪的な態度に傷付いて悲しんでいたことになる。

あいつはいつも平気な顔をして、俺たちのからかいも悪態も受け流していた。でも、それは見せかけで、実際は職場での孤立に悩んで、緑川に相談していたとか?

その仮説に、俺は嬉しくなった。

俺はずっと、藤枝に無視されていると思っていた。
興味関心がないから、俺の態度を受け流すんだと思っていた。

なんだ、あいつは人並みに傷付いていたのか。
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