メランコリック
「え……送別会ですか」


私は同じく小声で返す。内緒話をするみたいに。


「品川店と大井町店からも信用のおける社員を誘ってあるんだ。この店舗では藤枝以外はダメだからさ。俺も急な異動で、きちんと申し送りできないのが不安なんだ。どうかな?」


そういうことなら……。
私は頷いた。

杉野さんの笑顔を見るのも最後だ。
飲み会は苦手だけど、送別会くらいは参加するのが筋だろう。
当然、相良や兵頭さんには秘密にしなければならない。

杉野さんはこれから他店舗にも報告に行くと出かけていった。
私はその姿を見送り、スタッフルームから店舗フロアへ出る。すると、そこに相良がいた。


「杉野と飲みに行くのかよ」


まさかとは思ったけど、やはり聞き耳を立てていたようだ。
小声だったのに、よく聞こえたものだ。
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