こんぺいとう
どれくらいの時間が流れたんだろう…
風も無いのに突然桜の木がザワザワと音を立てた。
この桜もきっと私を責めているんだ…と思ったが、そうでは無かった。

突然雄治の声が聞こえたんだ。
夢を見ていたのかもしれないね。でも確かに雄治がそこに居たんだ。

「孝太。お前は生きろ。二度と戦争という過ちを繰り返さぬよう、戦死した者の分までお前は生きろ。文子を頼んだ」

…雄治は消えてしまった…
でも私は思ったんだ。後悔しながら生きるより、誰かのために生きたいって。
私はそれから、サイパンで共に戦って死んでいった仲間の家を回った。
ご遺族に、彼は必死に生きていたと伝えるために…
サイパンには向かう事が出来なかったけれど、それでも私が伝えられる事は全てやろうと決めたんだ。

それから三年後、私は雄治との約束を果たすために文子と一緒になった…
二人の中に、雄治を生かし続けようと…
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