こんぺいとう

1940年

1940年―夏―
幼なじみだった文子、雄治、孝太はいつものように河原にいた。
だんだん戦争が激しくなっていく中で、唯一気持ちが和む時間。
雄治は紙に包んだコンペイトウを取り出すと、一粒口に入れ、二人にも差し出した。
「雄治は本当にコンペイトウが好きだな」
笑いながら孝太も一粒口に入れた。
「これから先、コンペイトウを食べる事も出来なくなるのかしら。」
食料不足と終わりの見えない戦争の不安で、文子の顔が曇る。
「大丈夫。きっと日本はアメリカに勝つから。」
孝太はいつものように明るく言ったが、文子の不安は拭えなかった。
いつ二人にも赤紙が届くか分からない。そして自分の命だって、いつ空襲で奪われるか分からない。
「なんで戦争なんかあるんだろう。誰かを殺したり、殺されたり、そんな事で何も生まれないはずなのにな。」雄治の言葉に深く頷く文子。本当は孝太だってそう思う。でもどうすることもできないのだ。

三人は子供の頃からいつも一緒だった。でも結局は男と女。雄治と孝太にとっては文子はマドンナ的存在だった。でも孝太は知っている。文子が雄治を思っている事を。
自分の思いが届かないならば、せめて文子の幸せを願い続けよう。
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