甘い時 〜囚われた心〜
雛子達を送った後、教室に戻ったが、桜華の姿がない。

理事長室にも行ってみるが見当たらない。

30分ほど、探したり、携帯にかけたりするが見つからない。

結局、もう一度理事長室に行ってみた。

ドアノブに手をかける。

「っ!」

鍵が開いていた。

ガチャリ…

窓の明かりだけの部屋は暗く、その窓を背に座る立派な机には、どこを見ているのか分からない桜華がジッと動かず座っている。

「どちらにいらっしゃったんですか?」

答えない。

「雛子さんには、篠原さんと先に帰っていただきました」

何も答えない桜華。
ふと、尚人の頭に泣き崩れる雛子の姿が浮かんだ。

「泣いていましたよ……いつか、こういう日が来ることは分かっていたと…」

その言葉に、少し桜華の瞳が揺れていた。

一点を見たままだった桜華が、大きく深いため息をつき、天井を見上げた。

「尚人…」

いつもより低く感じられる声。

ユックリと机に肘をつき、鋭い眼孔が尚人を捕らえた。

「あの話を至急進めろ。もう待てない…」

尚人は、深く頭を下げる。

「かしこまりました…お任せください…」
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