甘い時 〜囚われた心〜
最後のキス
それから、一週間


当たり前のように桜華の隣を占領する祐希奈。

少し離れた後ろを歩く雛子。

端から見れば、主と使用人である。









そんなある日、鈴音から誘われて、街に買い物に付き合うことになった。

「雛子…何か欲しい物なぁい?」

車の中、鈴音が首を傾けながら聞いてきた。

「ううん…今日は鈴音の買い物に来たんだから、気にしないで」

ニッコリと笑いかけてくる。

鈴音はその無理矢理作ったような笑顔が心配だった。

「雛子…辛いことあったよね?…私にいって欲しいの…」

「…鈴音…」

「私じゃ頼りないかな?でも雛子と、ちゃんと何でも相談出来る友達になりたい…」

真っ直ぐに雛子を見る瞳に、涙が出そうになった。

「ありがとう…鈴音……ありがとう…」

親もいなくなった

大事にしてくれた人達もいなくなった

友達だと思っていた人達もいなかった

初めての恋もなくしてしまうかもしれない

今、自分を真っ直ぐに見る鈴音に頼っていいのだろうか?

迷惑じゃないだろうか?

自分が諦めれば済む話なのかもしれない…


ここ何日も同じ想いが頭を廻っていた。
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