甘い時 〜囚われた心〜
「私…パパが死んじゃって…」

それから、長い時間をかけて話をした。

父の死

叔父に家を追い出された事

ホステスをした事

桜華との出逢い

桜華に買われた事

体から始まった事

いつの間にか桜華に引かれていた事

ただの使用人の自分を桜華が受け入れてくれた事

そして祐希奈の事

桜華を諦めなければならない事



鈴音はただ静かに、たまに頷きながら、話を聞いてくれた

目的地に着いても車を止めて、話をした。

すべてを聞いた後、鈴音は雛子に聞いた。

「諦めるの?」

雛子はしっかりと真っ直ぐに鈴音を見つめ言った。

「諦める。私も一様、桜華や鈴音と同じ立場にいたことがあるんだもん…神楽との結婚が桐生院にもたらす物が大きい事も分かる過ぎるぐらい分かるから…桜華にこれ以上、迷わすわけにはいかない…私が引くことが一番だって分かってる…」

そう言った強い言葉とは反対に涙が溢れていった。

「でも…でも…」

へへっと笑いながら、拭っても拭っても流れ出る涙を拭いながら

「でも…なんで私…神楽じゃなくなったのかなぁ…」

と泣き崩れた。

鈴音はその小さな体を抱き締めた。



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