甘い時 〜囚われた心〜
雛子は晋也の言葉に反応せずにジッと晋也をみているだけ。

「今日、なぜ呼んだか分かるか?」

晋也は静かに冷たく話し出す。

「……はい……」

ついに来たと、雛子は視線を下に落とした。

「分かっているなら、今日から、こちらに戻りなさい」

「っ!…今日…今日から…」

まだ、桜華にサヨナラもしていない…

制服のスカートをギュウっと握りしめる。

「あの!…今日は、あちらに帰らせて下さい!明日っ…明日、朝から戻ってきます!今日は…お願いします!」

畳に擦り付けるように頭を付け土下座する。

「早ければ早い方が良い」

しかし、冷たい声はそれを許さない。

「お願いします…!」








どれくらいしただろう。

口を開いたのは祐希奈だった。

「パパ、いいじゃない。雛子ちゃんが私達を裏切るわけないわよ…ね?」

可愛い笑顔の目の奥が、ギラギラと雛子を見下ろして光っていた。
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