甘い時 〜囚われた心〜
神楽の屋敷を、フラフラと出ようとした時だった。

「雛子様!」

史乃がいた。

「お送りします…」

雛子はプルプルと首を横に振る。

「大丈夫…史乃は、祐希奈ちゃんのメイドでしょ?心配しないで…」

力なく笑うと屋敷を後にした。





門を出ると、待っていたように一台の車が横付けした。

スモークの貼られたガラスが下がっていく。

「雛子…」

鈴音が心配そうに微笑んでいた。

扉を開け、雛子を引き入れる。

疲れはてたように鈴音に寄り掛かる雛子を抱き締めた。

顔は見えなかったが、雛子が泣いているのが分かった。

震える体

背中を優しく撫でてやる。

なんで、この子は幸せになれないの?

なんで、いつも泣かなければならないの?

鈴音の目にも涙が溢れてきていた。
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